このページの目次
〈Step1:変更案作成〉
まずは、就業規則の変更案を作成
この段階で、御社が盛り込みたい内容を確認致します。
〈Step2:従業員代表からの意見聴取〉
就業規則の変更については、作成時と同様に従業員代表者からの意見聴取が義務づけられています。
従業員にとっての不利益変更は各労働者の同意が必要になる為、注意が必要です。
※不利益変更になるかの判断は後々の事を考え、自社での判断は注意が必要です。
〈Step3:就業規則の届け出〉
従業員代表からの意見聴取が終わったら、就業規則変更届を労働基準監督署へ提出します。
〈Step4:変更後の就業規則の周知〉
変更後の就業規則は、従業員に周知することが義務付けられています。
周知方法につきましても、法律で定められています。
以上が就業規則変更の流れになります。
【注意点】
1.不利益変更
就業規則の不利益変更とは、「就業規則により従業員の労働条件を従業員にとって不利益に変更すること」をいいます。
そして、自社で予定している就業規則の変更が不利益変更に該当する場合は、以下の「就業規則による不利益変更の原則禁止のルール」に抵触しないかを検討することが必要です。
就業規則の変更手続きでは、従業員代表からの意見聴取手続きがありますが、これは各従業員からの個別の同意を得るものではありません。
このような各従業員からの個別の同意を得ない就業規則の変更手続きによっては従業員の労働条件を不利益に変更することができないことが原則です。
しかし、例外的に、法律は、「変更の内容が合理的な場合であり、かつ変更後の就業規則を周知させていた場合」に限り、従業員個人の同意を得なくても、就業規則の変更により労働条件を変更することを認めています。
この就業規則による不利益変更の原則禁止のルールは、具体的には労働契約法第9条、第10条で定められています。
・就業規則の不利益変更の実際のリスク
それでは、原則として禁止されている就業規則の不利益変更を会社が行った場合、実際上どのようなリスクがあるのでしょうか?
以下では、就業規則の不利益変更についての3つの裁判例をご紹介して、「就業規則の不利益変更を行った場合の実際のリスク」についてご説明したいと思います。
(判例1)
〈事案の概要〉
スーパーマーケットにおいて、基本給を減額して固定残業手当を増やす就業規則の変更を行ったところ、従業員の1人が残業代の支払いを求める裁判を起こし、その中で就業規則変更による基本給減額は無効であると主張した事案です。
〈裁判所の判断〉
就業規則の変更を無効と判断し、基本給減額分など「約540万円」の支払いを命じました。
〈裁判所の判断の理由〉
裁判所は、「従業員の給与水準を大幅に下げる内容であること」などを指摘して、就業規則の不利益変更に合理性がないと判断しています。
(判例2)
年功序列型の賃金制度から成果主義型の賃金制度に移行する就業規則の変更を無効と判断した裁判例 (クリスタル観光バス事件 大阪地方裁判所平成19年1月19日判決)
〈事案の概要〉
バス会社において、年功序列型の賃金制度から成果主義型の賃金制度への移行を内容とする就業規則の変更を行ったところ、成果主義の下で賃金が減額された従業員ら3名がこれを不服として訴訟を起こした事案です。
〈裁判所の判断〉
就業規則の変更を無効と判断し、賃金が減額になった従業員に対する賃金差額として3名に対して合計で「約1200万円」の支払いを命じました。
〈裁判所の判断の理由〉
裁判所は、「成果主義型の賃金制度は、若い従業員の意欲を引き出すことができるなどの利点があり、中長期的にみれば、新賃金体系を採用する必要性があるということができるが、有効な代償措置をとることなく、また、経過処置を設けることなく直ちに新賃金体系を導入しなければならないほどの差し迫った必要性があったということはできない。」として就業規則の不利益変更に合理性がないと判断しています。
(判例3)
年間休日を4日削減する就業規則の変更を無効と判断した裁判例(東京地方裁判所平成24年3月21日判決)
〈事件の概要〉
誕生日やクリスマスなどを休日としていた会社が、業績の大幅な落ち込みに対応するために、これらの休日を出勤日に変更し、合計で就業規則に定める年間の公休日を4日削減したことについて、従業員らが不服として訴訟を起こした事案です。
〈裁判所の判断〉
公休日を4日削減した就業規則を無効と判断し、訴訟を提起した従業員らについて、廃止された公休日4日を「今後も休日として扱うこと」を会社に命じました。
〈裁判所の判断の理由〉
裁判所は、公休日を4日削減した就業規則の変更は不利益変更にあたるとしたうえで、以下の点を指摘して、就業規則の変更は無効としています。
- 就業規則変更により従業員が受ける不利益(年間休日4日削減)の程度は必ずしも小さいとはいえないこと。
- 業績の大幅な落ち込み自体は認められるとしても、就業規則変更を行って、従業員に上記の不利益を法的に受忍させることを正当化するまでの高度な必要性があるとまではいい難いこと。
- 会社と労働組合等との間で実質的な交渉がなされ、十分に利益調整がされた上で就業規則変更がされたとはいい難いこと。